◆千葉の森林再生プロジェクト(JIA千葉)
(主催:(公社)日本建築家協会関東甲信越支部千葉地域会 後援予定:(一社)千葉県建築士会)


この2020年度、公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部千葉地域会(以下通称:JIA千葉)では『千葉の森林再生プロジェクト』と題する複合事業を企画しており、この秋より、本プロジェクトの様々なプログラムが本格的に始動いたします。つきましては、以下にプロジェクトの主旨と各プログラムの予定を公開いたしますので、紙面掲載して広報頂ければ幸いです。

(公社)日本建築家協会千葉地域会(JIA千葉)
代  表       榎本 雅夫
プロジェクトリーダー 森田 敬介


千葉の森林再生プロジェクト
~千葉県の森林環境を改善し木材生産の向上を推進するために~


 わが国の森林政策において、千葉県は木材の消費県であって「生産県」ではないという位置づけから山林整備や林業促進の政策がとられておらず、このため木材の伐出しに必要な林道整備や材木育成のための間伐、そしてJAS認定工場の設置などの林業環境整備が出来ず、継続的な事業としての市場が育たず千葉県の林業は衰退の一途を辿って来ました。
 一方、「サンブスギ」に代表されるように、赤身の木目が美しく比較的対候性のある木材が採れる事は古くから知られており、昨今の木材利用拡大の機運を活かして「千葉の木」を安定して生産可能な状態にしてゆくことが望まれます。
 しかしながら、この問題には木材を「利用する側」の理解と体制が大きく影響する為、林業者・木材生産者の努力だけでは解決できない、または非常に時間のかかる問題になります。
 このため「利用する側」である建築家が県内林業の抱える問題を認識し、「生産する側」を巻き込んだ活動を起こしてゆくことが必要なのです。
 こうした実情を知るため、JIA千葉では2019年に「県産木材まるごと建築百科」と題し、千葉県森林課や森林組合との協働で講習会を開催致し、この事業は森林業界からも高い評価と共感を頂いて、今後とも継続的な協働ができないかとのお話を頂きました。
 これを受けてJIA千葉では、利用者である建築家が率先して県産木材の利用に取り組むことで、建築設計業界だけでなく行政や林業など幅広い業界を含めた地域経済へと広がる協働の輪を育み、千葉県の山林と里山環境の改善のムーブメントを醸成する事を目標に掲げ、『千葉の森林再生プロジェクト』と題する高い公益性のある複合事業を開催する事と致しました。
 また、JIA千葉が単独で取り組んでもプロジェクトの理念の裾野は広がらないため、建築系では日本建築学会関東支部千葉支所と日本建築構造技術者協会関東甲信越支部千葉地域会、林業関係では千葉県と千葉県森林組合連合会の4つの機関による共催という体制で実施することとしました。
 このプロジェクトでは、木材利用推進の機運を醸成する「千葉県産木材利用促進事業」、倒木を建築材料として活用し森林整備を促進する「台風災害支援活動倒木処理促進事業」、そして中大規模の木造建築の設計業務拡大に対応すべく木構造の構造設計技術者を養成する「木構造設計技術者の養成事業」の3つの事業を柱とし、5つのプログラムで計画しております。
 「設計監理業務」という生業(なりわい)から我々建築家の「公益性」は、とかく自分の作品評価や仕事の周辺にある社会や設計業務に付随した教育・普及活動だけに目がゆきがちですが、この事業では建築作品や建築技術という視点だけでなく、社会全体を本気になってサポートする本来の『建築家』像を目指します。
ちなみに「森林再生」とは台風や大雨による倒木や土砂崩れによる大被害からの復活を支援して、建築家が出来るサポートを模索するという意味もありますが、千葉県産木材を使用する目標は、その昔の地域で使う木材を地域で産出していた時代のように、千葉県の森林(里山)を再び活きた状態に再生する方向に始動することを目指すものです。


【千葉の森林再生プロジェクト事業コンテンツ】

【事業A】千葉県産木材利用促進事業
千葉県の木材利用推進のため、千葉の山林と里山環境の改善を誘導してゆく事業として、建築作品やプロダクトだけでなく、林業プロセスの改善など「木材生産から利用まで」を考えるムーブメントを醸成する事業です。シンポジウムでは建築業界や林業界に留まらず広く一般をも対象にして機運を高めた後に、木材利用および生産プロセスのアイデアおよび作品を募るコンペティションを開催します。

(A-1)千葉の木づかいシンポジウム
「コンペティションの募集期間の前半」でPRを兼ね、県産木材の生産から利用に関わる関係者が集い、木材利用拡大の実現に向けた意見交換をおこなう
    ・日程候補:2020年11月25日(水) 午後2:00
    ・開催場所:千葉市民会館地階小ホール(参加人員138名)
(A-2)千葉の木づかいコンペティション
建築作品やプロダクトだけでなく、木材利用から生産プロセスのアイデアに至るまで、「木材生産から利用まで」という、千葉県の木材利用推進全てに係わる提案・作品を募るコンペティション
    ・参加対象:一般市民・学生(大高)・建築家・行政・林業・製造業
    ・募集日程:2020年12月01日(火)~2021年02月01日(月)
    ・審査日程:2021年02月19日(金)
    ・作品展示:2021年03月09日(火)~19日(金)
    ・会場予定
    審査・表彰:県庁本庁舎1階多目的ホール(予備会場:建築会館8階)
     作品展示:県庁本庁舎1階連絡通路
※コロナウイルス感染症の影響などで審査・表彰会場が変更の可能性あり

Ⅰ.実施作品部門
 評価基準:県産木材(倒木を含む)を沢山または効果的に使用した作品・製品の提案
 (I-1)建築作品の部
 (I-2)プロダクト作品の部

Ⅱ.アイデア部門

 評価基準:県産木材(倒木を含む)の量的需要を産むアイデア・新規性のある利活用方法・新商品の提案

Ⅲ.プロセス・ソリューション部門
 評価基準:林業・組織・生産・流通・倒木処理など木材生産プロセスの変革と問題解決のアイデア


【事業B】台風災害支援活動倒木処理促進事業
 (B-1)倒木被害見学会
   ※このプログラムは既に実施され終了しました
    ・事業目的:事業全体の活動の皮切りとして、倒木被害と山林荒廃の現状を見て知ること
    ・開催日程:2020年2月20日※見学の後、説明とフリートーク会と交流会を実施
    ・開催場所:森林組合の希望する林道および森林と木材集積所(君津市内の土場)
    ・参加人員:JIA千葉の各種会員・森林組合員・千葉県庁森林課

 (B-2)倒木流通会(木材流通会)
    ・事業目的:倒木の安全な利用に建築家が率先して取組む事により、倒木処理の推進と林業者のモチベーションを向上し千葉の林業の安定を図る
    ・開催期間:2020年10月23日(金)
    ・開催場所:森林組合の委託する製材所(ナトゥアリーベ明石屋)と明澄幼稚園

【事業C】木構造設計技術者の養成事業
 中大規模木造建築の設計業務拡大に対応すべく木造非住宅建築物の構造設計技術者を養成する
 木構造設計技術者育成実務セミナー(材料・関連法規・接合部仕様)
  第1回:2020年10月09日基礎講座-木造関連法規とコスト認識稲山正弘氏(DVD)
  第2回:2020年11月12日実務講座1-在来軸組構造設計実習實成康治氏(実演)
  第3回:2021年01月19日実務講座2-大断面構造設計実習山辺豊彦氏(実演)